05. 飼育環境

 繁殖を目指した飼育を担当するにあたり、まず考えたことは飼育ケースの中に生息地の環境を出来るだけ再現することでした。

 

 いかにしてケースの中に「ヴァージンウォーター」を実現するか。水族館では裏山の湧水をポンプで引き込み掛け流しとしました。幸い外気温の影響を受けることも少なく、年間の温域は3℃~18℃、天候による変動や日変動巾も小さく0~1.5℃程度におさめることができました。

 共食いなどの事故を避けるために交配時以外は常に単独での飼育とし、巣穴を掘込めるように砂礫を10㎝ほどの深さに、こぶし大の平石も数個組み込むことにしたので、スノコを組み底面からの給水としました。給水量は毎分0.5ℓ 程度と少量ですが、ケースの隅に滞留して腐敗することもなく、年に2~3回の底砂洗いで健康が保たれています。掛け流しによる常時換水そして飼育ケース全体が物理濾過、生物濾過の機能も果たしていると考えています。

 設置場所はバックヤードの通路沿いですが、北東側の窓にも接しているので日長変化の感知にも問題ありません。

 餌は腐植を常に飽食。カエデなどの落葉を長期間水に浸したものを中心に、沢に沈んでいるゴミ=小枝などの植物質の破片なども拾って来て与えます。ミミズや冷凍アミなどの動物質を週1回ていど食べきる量与えています。稚ザリのうちは特に動物質を欲しがるようです。

 

 一方、大西個人用に町なかの自宅で、引き取った稚ザリの飼育を始めました。

 町なかの飼育槽にいかにして「ヴァージンウォーター」を実現するか。さすがに「湧水の掛け流し」は出来ないので、水道水100%の止水で飼育しています。幸い室蘭の水道水は河川の源流部で取水しています。人間が生で飲めるほどきれいになった水が地下を通って供給されることにより温度も地下水に近くなっています。まるで「湧き水」みたいじゃないですか。

 残る問題は、①消毒用に投入された塩素、②鉄など導管から溶け込む成分、③蛇口を出た後の温度変化などですが、①は放置すればカルキは抜けます、②は普通は無害です、③は出来るだけ断熱しました。本州で飼育される方は平均温度自体が高いので「断熱」だけでは無理で、何らかの方法で冷却しなければなりません。